検車課は、車両のメンテナンスを担当しています。検車課の担当する検査には、10日を超えない期間ごとに目視点検を中心に行う「列車検査」と、3か月を超えない期間ごとに、打音・触手・動作試験・数値測定などで細部の点検を行う「状態・機能検査」があります。
これに加えて、運行中の列車で万一トラブルが起きた際の対応や、それを未然に防ぐための予防保全作業、そして運行ダイヤや検査計画に合わせて日々使用する車両を決める配車業務なども検車課の重要な仕事です。
その中で私は、「列車検査」と列車のトラブル対応をメインで行うチームのリーダーを務めています。5日に一度は昼夜を通して業務にあたります。すべてチーム単位で業務に取り組んでいます。
運行中の列車にトラブルがあった場合は、運輸部・運転指令から現地の状況に関する連絡が入ります。検車課はその状況にあわせた迅速な対応が求められます。
例えばある時は、運輸部からの情報をもとに限られた時間で推定原因とその処置を決定します。その結果、現地に派遣した係員がその推測通りにスムーズに処置を完了させ、安全な運行を継続できた時はやっぱり嬉しいですね。
「トラブルを解消できた」という技術者としての満足もありますが、それよりも「お客様に安全な車両をご提供できたこと」、そして「次のチームに安全を引き継げたこと」にホッとします。
私が今の職場に作業員として初めて配属されてまだ2か月目の頃に、阪神・淡路大震災がありました。
私は当時一番の若手として脱線車両の復旧作業にあたっていたのですが、駅建物と車両の隙間が小さかったり、地面や線路が歪む様な困難な状況の中で、当時の班長さんの的確な指示により、短時間で次々と脱線車両を復旧させていったのをよく覚えています。
そのときの班長さんの動きやリーダーシップを見て、私もこうなりたいと強く思ったのを記憶しています。
今後の課題としては、やはり若手の育成でしょうか。今は車両の品質がとても良くなっているので、運行中のトラブルが随分少なくなりました。それ自体は良いことなのですが、対応に出向き技術者としての経験を得られる機会が減ったという側面もあります。その経験不足を補うために教育・訓練を充実させてはいますが、現場教育で私たち年長者の経験を伝え引き継ぐことでしか補っていけないものもあると考え、日々取り組んでいます。
そうすることで、今後、たとえ大きなトラブルが発生した場合でも、現場で迅速に対応できる技術を備えておくことができ、安全で安心できる車両を継続的にお客様に提供していくことにつながると考えています。
また、一つのミスが大きなトラブルにつながりうることを肝に銘じて毎日の業務に取り組んでいます。一つ一つ作業を確実に行うことの重要性は、自チームはもちろん他チームの班員にも普段から口うるさいほどに伝えることを心がけています。
最近は新型の5700系やリニューアルした5500系の車両など、新しい技術が投入された車両が増えています。その車両をメンテナンスするための新しい知識や技術の修得はチームテーマのひとつです。車両に新しい技術を導入するということは高性能になる反面、これまでに経験のないトラブルも発生するかもしれません。それをチームで一緒に勉強して未然に防いだり、対応をしていくことで一緒にレベルアップしていければと思っています。
今はチームが一丸となって、良い信頼関係で互いを高めつつ仕事ができています。この向上心をずっと持ち続けていきたいですね。
お客様に安全・安心をご提供する気持ちを常に持ち続け、そのためにチーム力を高める原動力の役割を果たしていくのが自分の使命だと考えています。